第8話 旅立ち

2019年9月13日

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ニューヨークからバンクーバーに帰って来て3日後に、カイオのお葬式が執り行われた。(カナダでは、いわゆるお通夜は無く、会葬者が故人にお別れを告げる告別式だけが行われる。)

喪服を持っていなかった私は、急いでMacy’sに行って黒いスーツを一着買った。

お葬式当日、花束を抱え、ジェームスと彼の両親4人でタクシーに乗り告別式場に向かった。

100人ぐらいはいただろうか。私たちが到着した頃にはもう既にほとんどの人たちが集まっていた。

椅子が外に配置されており、壇上にはカイオのお棺、司会者台とマイク、100インチ程のモニターがあった。

告別式は、日本で通常執り行われるものとは全くもって想像を超える程違うものだった。式を進行したのはカイオのパートナーであるマイルズ。

マイルズ「みなさま、本日はカイオのために遠いところまでお越しいただきありがとうございます。」

マイルズがそういうやいなや、バックグラウンドで明るい音楽が流れ始めた。カイオはブラジル出身だったので、カイオが好きなブラジルの陽気な、パーティーで聞くような音楽が流れ出した。

海外のお葬式はこんな感じで始めるのか!?いきなり不意を突かれたと思ったら、後ろの方ではポテトチップスをバリバリ食べる音が聞こえてくる。自由すぎないか、、w

マイルズの本業は役者だったため、司会進行はお手の物といった感じで会葬者を沸かせ楽しませた。どちらかというと結婚式みたいな雰囲気。。

式の中盤ごろには、モニターに動画が映し出され、そこにはカイオと彼の友人が一緒に映っていた。その動画の中には、ジェームスとマイルズが映っているものもあり、3人が無言でWiiのコントローラーをしきりに振っている動画が流れ、会場は一気に笑い声に包まれた。

最後の方に、マイルズは皆に報告があると言い、実はカイオと病院内で結婚していたことを明かした。

結婚指輪を私たちに披露した後、出会いのエピソードやカイオに対しての感謝を綴る中で、私たちに笑いの表情しか見せていなかったひょうきん者のマイルズは、その日初めて涙を見せ、マイルズの声は裏返り、必死に司会を進行しようと試みるも、その場で泣き崩れてしまった。

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式は一時中断したものの、マイルズはマイクを握り続け、最後まで進行を続けた。。

その後、私たち会葬者はマイルズの前に長い列を作り、彼に一言挨拶をする順番を待った。15分ほどして私とジェームスの番になり、マイルズにお悔やみの言葉を伝えると、マイルズは急にズボンのポッケをガサゴソし、何かを取り出した。

マイルズ「これジェームスとれいちぇるにあげるよ」

マイルズの両手には未使用のコンドームが10数個あった。

マイルズ「俺しばらくはいらないと思うからさ!悲痛を和らげるにはSexが一番なんだよ、だからこれでも使って一緒に哀傷を乗り越えてよ」

満面の笑みで私たちにコンドームをどさっと手渡し、私たちを笑わせた。後ろに並んでいる人たちからも笑い声が聞こえ、終始笑いの絶えない会となった。

こんなに涙や笑顔に溢れた感動的なお葬式は生まれて初めてだった。カイロのお葬式は、悲しんで彼を送るよりも、楽しんで、笑顔で送りだして欲しいという彼の最後の願いだった。

ブラジルで生まれたカイロはバンクーバーを愛し、人を愛し、人に愛され、最高の生涯を送り今もバンクーバーで安らかに眠っている。

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実際の写真。カイオ(中央)、マイルズ(一番右)とカイオの家族。

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実際の写真。カイオ(左)とマイルズ(右)

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