第7話 突然の死

2018年6月19日

スポンサーリンク

ジェームスには何があったか一言も言わなかった。女の子とデートしたという事実が表向きに出るのを避けたかった。女性が恋愛対象である事をジェームスにオープンにする怖さというより、まだ本当に女の子を好きかどうか自分でも確信がない中で、それを言葉にするという事に戸惑いがあった。

また、ジェームスも、どういう過程で夜中の1時に私がダウンタウンにいて、息を切らしてジェームスの家に来たのか、一切聞こうとしなかった。興味が無いというよりも、私が何も言いたくないのを察してくれていたようだった。

warm_hug_beach

その後2~3週間が経ち、ジェームスと私との関係は、「友達」から「恋人」に変わった。私がバンクーバーを去るその日までの10ヶ月の間、彼は特別な存在となり、初めて住む海外で不安が付きまとう中、私を精神的にも語学力の面でも支えてくれた。

彼は、私の英語の理解が追い付かずどんなに時間が掛かっても、根気強く、丁寧に教えてくれた。そのおかげで、10か月の間に見る見る私の英語力は向上し、日本に帰る頃には、語学学校で同じクラスにいたどの人よりも英語が話せるようになっていた。

スポンサーリンク

 

ジェームスと遊ぶときは、よくジェームスの親友のゲイカップル、カイオとマイルズ(本名)と時間を過ごした。

時間を過ごしたと言っても正確には、カイオとは一度しか面と向かって会ったことがない。初めて会ったときは既に、カイオの身体は悪性腫瘍のガンによってむしばまれていた。発見が遅く、もう治る見込みがないと診断された。会って数日後にはカイオは寝たきり状態になっていたため、カイオ、マイルズと遊ぶときはいつもスカイプやメールを通してコミュニケーションを取っていた。

5月中旬頃、カイオの体調が少し良くなったと聞いて安心し、ジェームスと私は6月頭に向けてニューヨークに行く旅行を計画した。カイオとマイルズも一緒に連れいて行きたかったけれど、そこまでは回復しておらず、マイルズもカイオをいつでも看病できるように側にいた方が安心ということで、旅行は2人だけで行く事になった。

2011年6月12日、日曜日の夜、ジェームスと私は夕飯を終えてニューヨークのホテルで一休みしていた時、彼の携帯は突然鳴った。ジェームスがソファからゆっくり立ち上がり、電話に出た瞬間、それが何の電話なのかがわかった。ジェームスはしきりに「Yes、Yes」と震えた声で応えていた。

彼は電話を切り、声を上げずに涙を流しベッドにうずくまった。私は彼のそばに寄り添い、悲痛を共感した。

少し回復したと思われていたカイオの体調は、その日の夕方から急変し、2011年6月12日、享年23歳で亡くなった。同い年だった。

スポンサーリンク